生前贈与
2つの贈与の方式(暦年課税・相続時精算課税)
贈与税の課税方式には、暦年課税と相続時精算課税の2つの方式があります。
前者は、1年間の贈与に対して課される課税方式で、後者は平成15年に新しく導入された相続税と一体化した課税方式です。
各々に長短あるので種々の相続対策が考えられますが、一度後者を選択してしまうと前者に後戻りすることができなくなるので、慎重に検討していく必要があります。
なお、相続・遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得していれば、生前贈与加算として贈与価額が相続税の課税価格に算入されます。
その際、相続税額から贈与税額控除を行うことで二重課税の防止をしています。
なお、平成25年度の税制改正により、贈与税の緩和と強化が図られています。
暦年課税方式の贈与による相続対策
生前に贈与をしておくことで、相続財産が減少することになるので、生前贈与は有効な相続対策といえるでしょう。
ただし、贈与税の税率は相続税より高いことが多いので、贈与を実行する場合には、専門家を交えて検討することが必要です。
暦年課税の基礎控除
贈与税は、贈与を受けた受贈者にかかる税金です。
同じ人から年間110万円までの贈与については、贈与税はかかりません。
したがって、多くの人に、何年にもわたり贈与すると、多くの相続財産の減少につながります。
但し、贈与した年毎に、きちんとした手続き(贈与契約書作成・確定日付・不動産登記名義変更・振込・申告等)を踏まないと、連年贈与とみられる可能性があるため、注意が必要です。
居住用不動産の夫婦間贈与
ここで取りあげる居住用不動産の夫婦間贈与とは、、婚姻期間20年超の夫婦間で、居住用不動産かそれを取得するための金銭(翌年3月15日までに実際に取得必要)を贈与した場合に受けられる贈与税の配偶者控除という特例のことをいいます。
贈与税の申告は必須で、該当すれば、基礎控除110万円と併せて、最高2,110万円の控除が受けられます。
相続税の基礎控除の引き下げなどにより、将来、相続税が課せられる人が増えるといわれていますので、今後さらに生前にこの特例を利用する人が増えると思われます。
また、生前贈与された財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものは相続財産に加算して相続税を計算する必要がありますが、この特例により贈与された財産は、相続開始前3年以内であっても相続税を計算する際の相続財産に加算されない、というメリットもあるため、相続税対策としても使えます。
申告には、贈与を受けた方名義(所有権移転登記後)の登記事項証明書が添付書類となりますので、登記の専門家である司法書士が担当致します。
控除の範囲内でより多く贈与したい場合、税金上、取得資金を贈与するより居住用不動産の現物を贈与する方が有利といわれています。
それは、評価する際の金額に差ができるためです。
金銭の場合、評価はそのままですが、不動産の場合には、路線価(土地)や固定資産税評価額(建物)で評価されます。
通常、路線価は公示価格の8割、建物の固定資産税評価額は建築費の5~7割程度(新築の場合)で評価されているといわれていますので、金銭が10割と考えると、その分、評価が下がることになります。
住宅取得等資金贈与の特例
住宅取得等資金贈与の特例とは、平成26年12月31日までに、自己の直系尊属(父母・祖父母等)から、居住用家屋の取得や増改築に充てるための金銭の贈与を受けた場合、500万円(省エネ・耐震住宅の場合1千万円)まで贈与税が課されないという特例のことです。
国税庁によると、平成25年中にこの制度を利用した人は約7万5千人おり、合計5767億円が非課税になったとされています。
暦年課税の場合、さらに110万円加えることができため、合計660万円(省エネ・耐震住宅の場合1千110万円)まで、非課税となります。
以下、ポイントを挙げておきますが、適用条件には十分注意した上で、贈与を実行してください。
1.受贈者の所得制限あり。(贈与年の合計所得2千万円以下)
2.受贈者の年齢制限あり。(その年の1月1日現在で20歳以上)
3.対象住宅の延床面積は、50㎡以上240㎡以下。
4.物件引き渡し・入居は、贈与の翌年3月15日までに。
5.贈与税の申告必須。(贈与の翌年2月1日から3月15日までに)
教育資金の一括贈与非課税措置
平成25年3月から平成27年12月31日までに、父母や祖父母が、子や孫に、教育資金を贈与した場合、受贈者一人あたり1,500万円までは贈与税がかからないという制度のことです。
銀行等で、子や孫の名義で専用口座を開設し、そこに一括して入金します。
利用する際は、使い道が教育費であることを証明する領収書等を金融機関に提出することで、出金することができます。
注意すべき点は、この専用口座の契約は、子や孫が30歳になると終了するということです。
そして、使い切れなかったお金については、贈与税の対象になってしまうので、予め教育費の見積もりをしっかりしておきましょう。
また、この制度は、信託銀行等が盛んに宣伝し、期限もあるため、利用を焦る人がいますが、教育資金はそもそも、必要額をその都度もらう場合には課税されないとことは、あまり取り上げられません。
この制度は、当面使わない分も含めまとめてする贈与が非課税となる制度だということを、再認識してください。
まとめて贈与した結果、ご自身が老後資金に困ることになるようでは、元も子もありません。